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「東風吹かば、匂ひおこせよ、梅の花、
主なしとて、春を忘るな(春な忘れそ)」
菅原道真が、京の都から太宰府に左遷される時に、
日ごろ愛していた「梅の木」に別れを告げる際に詠んだ、
有名な和歌です。
その後、この梅は太宰府の道真のもとへ
飛んでいったといいます。
これが、「飛び梅」の伝説と言われるものです。
梅の花が咲く、春先には東風(こち)が吹きます。
東風(こち)は、春の「季語」でもあります。
漢方(中医学)において、理論的な根拠とされるものに
「五行論」というものがあります。
これは「宇宙の万物は、すべて木・火・土・金・水という
5種類の物質の運動と変化によって生成されている」
という考え方で、この学説に基づいて、
自然界と人体のすべてを「五行」に分類しています。
例えば、「木(もく)」は、
・五臓で言えば、「肝」
・季節で言えば、「春」
・方角で言えば、「東」
・外気で言えば、「風」
・五色で言えば、「青」
・感情で言えば、「怒」
・感覚器で言えば、「目」
などとなっています。
このように分類した表(ひょう)を「五臓色体表」と呼び、
人体、五臓のこと、症状、食べ物などが細かく記載されています。
これによると、
梅の花の咲く季節を「肝木の春」と言い、
冬には北から吹いていた冷たい風が、
東からの生温かい風へと変わり、
木々が芽吹き「青葉」が「目」を楽しませ、
何となく浮き浮きとして落ち着かない感覚になります。
ちょっとイライラしたり、「怒り」っぽくなったり…。
この時期のことを「木の芽時」と呼びます。
また春は、「風」の性質の如くに、
気候がコロコロと目まぐるしく変化し、一定しません。
最近では、その風に乗って「梅の香」ならぬ、
「花粉」が飛んで来たりします。
きっと道真の時代には、
「花粉症」などと言う、厄介な代物は無かったでしょうね。