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免疫の細胞を作り出す場所として
最も重要な場所は、「胸腺」と呼ばれる器官です。
胸腺は胸の中央部の胸骨の後ろ側、
心臓の真上にある臓器で、
元は鰓(えら)から発生したものです。
生まれたときには18gぐらいですが、
その後だんだん大きくなり、
思春期には30〜40gほどに成長します。
しかし、年齢とともに次第に萎縮し、80歳までには
最大時の1/2以下になってしまう不思議な臓器です。
胸腺は、以前は成人すると同時に退縮するため、
特に何の役割をするのかはっきりせず、
働きとしては明らかにされていませんでしたが、
最近免疫にとって重要な臓器であることが分かってきました。
胸腺は、強力な免疫力を作り出して
これをコントロールする「Tリンパ球」を育てます。
Tリンパ球をはじめとする白血球を作り出す臓器としては他に、
肝臓や腸管がありますが、
胸腺はTリンパ球だけを専門に育てているのです。
胸腺で作られたTリンパ球は、
白血球の中でもとりわけエリートで、自己には反応せずに
マクロファージが異物が侵入したことを伝達するやいなや、
Bリンパ球に抗体を作らせたり、
キラーT細胞にウイルス感染細胞やガン細胞の処理を命じたりして、
免疫を働かせるのです。
また、亢進した免疫を抑制するT細胞も胸腺で作られています。
このように、胸腺は私達にとって非常に重要な臓器なのですが、
精神的なストレスや放射線、
抗がん剤やステロイドホルモンなどに弱いという一面もあります。
ストレスが軽い場合には、
胸腺は萎縮しても元に戻る力がありますが、
強いストレスが長く続くと萎縮したままになって、
免疫力が低下してしまいます。
加齢やストレスなどで胸腺が萎縮してしまったときには、
その分、肝臓や腸管でTリンパ球が多く作り出され、
免疫力を保っていくようになります。
続きます。